点Qが描く軌跡~反転について(名古屋大2007年)
大学受験の数学で、ある点の軌跡を求める問題は頻出です。軌跡は高校では数学Ⅱ「図形と方程式」の分野で習いますが、入試では数学A「平面図形」や数学B「ベクトル」との融合問題も多く、出題されやすいのも分かります。
今回は、軌跡の中でも難関大でよく出る「反転」というテーマを背景にした入試問題を解説します。
「反転」をテーマにした入試問題の解説
(1)の補足
この問題を、接点AとBの座標を円の接線の公式を使って求め、線分ABの中点Qの座標を出すというように、数学Ⅱ「図形と方程式」の知識だけで解こうとすると、計算がとても煩雑になってしまいます。(画像になくてスミマセン)
そこで、上の画像では下記の手順で解答を記述しています。
- 三角形の相似からOP×OQ=1を証明する・・・数学A「平面図形」
- 3点が一直線上にある条件とOP×OQ=1から点Qの座標を求める・・・数学B「ベクトル」
(2)の補足
\begin{gather*} (1)で点Q( x_{1} ,y_{1}) を点P( x_{0} ,y_{0}) で表すことができたわけです。\\ ここからx_{0} ,y_{0} について解き、x+y=2に代入して、 \end{gather*}
と通常通りに進めるとやはり計算が大変そうです。
そこで、上の解答では、 \begin{gather*} 点Pのx_{0} ,y_{0} を直接点Qのx_{1} ,y_{1} で表す\\ \end{gather*}
ことで、計算量を大幅に減らしています。また、反転の性質から、点Pの座標を(1)を求めるのに点Qの座標を求めた解法を用いています。
これで、点Q軌跡の方程式が求まります。
(ここからは下の画像の説明)
最後はいわゆる軌跡の限界についてチェックし、原点が除外されることを確認します。
結局、点Qの軌跡は円(原点を除く)となります。
直線や円を「反転」させると像(軌跡)はどうなるか
こうした解法は、「反転」というテーマが背景にあることを知らなければ、なかなか思いつけないと思います。
「反転」の説明と例題に関しては、受験数学の神サイトである「受験の月」さんの下の記事が素晴らしすぎます。いつ拝読してもすごい。。。
私の画像にある「参考」では、名古屋大学の問題を少し一般化して、
点Pが直線や円周上を動くとき、点Qの軌跡はどうなるか
について説明しています。直線または円の方程式を \begin{equation*} a\left( x^{2} +y^{2}\right) +bx+cy+d=0 \end{equation*}
という一つの式で表しているのがポイントです。
結論として、点Qの軌跡は(ア)~(エ)の4パターンに分類されます。
- (ア)点Pが原点を通る直線上を動くとき、点Qは元の直線を描く(原点を除く)
- (イ)点Pが原点を通らない直線上を動くとき、点Qは原点を通る円を描く(原点を除く)
- (ウ)点Pが原点を通る円周上を動くとき、点Qは原点を通らない直線を描く
- (エ)点Pが原点を通らない円周上を動くとき、点Qは原点を通らない円を描く
見にくいですが、2枚めの画像の右上あたりに、今回の名古屋大の問題にあてはめたものを載せています。(イ)の結果に代入し、点Q軌跡の方程式が求まっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回紹介した「反転」は受験数学において、「逆像法」(大学への数学では「逆手流」)というテーマのサブテーマです。有名な1対1でも取り上げられていますので、気になった方はチェックしてみてください。
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できるだけ小さい自然数をかけたり割ったりしてある数の2乗にする
中3数学で学ぶ展開・因数分解は高校数学への土台となる重要な単元のひとつです。
普通は展開→因数分解の順に学びますが、因数分解の前に素因数分解というものがありますね。
筆算すればいいんでしょ、簡単カンタンと油断していると、学校ワークに突如、「360にきるだけ小さい自然数をかけてある数の2乗にしたい。どんな自然数をかければよいか。」といった問題に出くわします。「何これ、ちょっと意味が分からないよ。」と手が止まってしまった人も多いのではないでしょうか。
今回はこうした問題を2題解説してみました。参考になれば幸いです。
目次
(1)できるだけ小さい自然数をかけてある数の2乗にする
もしこの問題が360ではなく12だったら、小さい順に12×1=12でNG、12×2=24でNG、12×3=36で6の2乗だからOK!
よって、かける数が3である数が6とわかります。このように、当てずっぽうで解いても答えだけなら求まりますし、実際にわかりやすい数で実験してみて問題の意味をつかみ取る、という考え方は大切です。
ただ、今回は360と数が大きいので、360×2=720、360×3=1080と計算していっても厳しそうです。そこで、素因数分解が威力を発揮します。
詳細は上の画像を見てもらうことにして、ここではポイントだけ記します。
- 略解の一行目のように、四角やマルの記号を使って表す
- 四角の中には、各素因数の指数が偶数になるような数を入れる
- 指数法則を逆向きに使う
3つめを補足します。 \begin{equation*} \left( a^{2} bc\right)^{2} =a^{4} b^{2} c^{2} \end{equation*} これは中1で習ったので大丈夫ですね。この問題ではこの式を逆向きに使います。つまり、 \begin{equation*} a^{4} b^{2} c^{2} =\left( a^{2} bc\right)^{2} \end{equation*}を使います。これを使うためには左辺のa,b,cのそれぞれの指数が偶数である必要があります。指数が偶数になるように四角の中に入れる素数を決定します。
(2)できるだけ小さい自然数で割ってある数の2乗にする
基本的な流れは(1)と同じですが、ポイントを記します。
- 略解の一行目は、割り算の記号画像のように左辺をで表す
- 四角の中には、約分したあとに各素因数の指数が偶数になるような素数を入れる
- 7は約分されて1になりこれもOK
まとめ
いかがでしたでしょうか。この問題は素因数分解の威力が分かるいい問題だと思います。
学校のワークで挫折してしまった人もぜひ再チャレンジしてみて下さいね。
サイコロをn回振って「1の目が少なくとも2回出る」かつ「2の目が少なくとも1回出る」確率
確率の問題で、「少なくとも~」と言われたら余事象を考えよ、というのは定石ですよね。
余事象の確率は頻出なので、解法を覚えてしまっている人も多いと思います。ですが、今回の問題は、頭の中だけで処理しようとするとかなり混乱します。そこで、集合やベン図を積極的に活用して解いてみました。略解ですが参考になれば幸いです。
目次
(1)「少なくとも1回」かつ「少なくとも1回」の確率
こちらは参考書などでよく見かける典型問題ですね。
「少なくとも1回1の目が出る」かつ「少なくとも1回2の目が出る」
が直接求めにくいので、余事象を考えます。
「少なくとも1回1の目が出る」かつ「少なくとも1回2の目が出る」の余事象は、
「1の目が1回も出ない」または「2の目が1回も出ない」です。
「1の目が1回も出ない」は「n回とも2以上の目が出る」ということですから、こちらは簡単に求まります。
「2の目が1回も出ない」は「n回とも2以外の目が出る」ですから同様です。
ここで、「1の目も2の目も1回も出ない」がダブルカウントされないように注意する必要があります。「1の目も2の目も1回も出ない」は「n回とも3以上の目が出る」と言い換えられます。
このように言葉で考えていっても(1)であればなんとか処理できるのですが、上の画像の略解のように集合の記号を使って、機械的に求められるようになると(2)への応用が効きやすくなります。
(2)「少なくとも2回」かつ「少なくとも1回」の確率
「少なくとも2回1の目が出る」の余事象は「1の目が出るのが1回以下」つまり「1の目が1回だけ出る」または「1の目が1回も出ない」です。さらに「少なくとも1回2の目が出る」の余事象は「2の目が1回も出ない」です。その上で1の目との「または」になるから、、、と言葉で考えていくとわけが分からなくなりますね。
そこで、上の画像のように集合の記号とベン図を使って、機械的に式変形していきます。
ただし、排反に分けるところは、現象をイメージして判断します。本問では「1の目が1回も出ない」事象と「1の目が1回だけ出る」事象は排反ですので、略解のように式変形ができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。画像の補足説明が言葉だけになってしまったので分かりにくいです。すみません。それだけ集合の記号やベン図がわかりやすいことの裏返しでもありますね。言葉で考えないと納得した感じがしない、ということもあるのですが、方程式と同様に機械的な処理の恩恵に預かるのも必要と思います。