こころの処方箋(河合隼雄著)~イライラしたり心が疲れた時に
もう10年位ずっと枕元に置いている。文庫本がボロボロになったので、2年ほど前に単行本を買い直した。
あまりにも有名な本なので、ブログに書くまでもないのだが、寝る前に読むと心が癒やされ、落ち着いて眠りに着くことができる。
テーマが55ほどあり、1テーマが4ページにまとまっている。長さもちょうどよく文体も易しいので、中学受験や高校受験の国語の入試問題によく採用されているようだ。
自分の生徒が通う一貫校でもたしか中1の夏休みの指定図書になっていた記憶がある。(中1が宿題で出されて読むような本ではないと思うが。)
それはともかくとして、著者の河合隼雄先生は、ユング心理学研究の第1人者であったのと同時に、心理療法の現場経験が豊富な方であったようで、カウンセリングでの実際の会話のやりとりが、本の中に随所に出てきて興味深い。
中でも、なるほどなあ、と思ったのは、
「心のなかの勝負は51対49のことが多い」(p68)
というところ。
「実際は51対49と非常に拮抗しているのに、49の部分は意識の底に沈んで見えないので、意識の上には2対0となって現れ埋めようのない差に感じらてしまう。サッカーで2対0なら完敗だが、実際にはそれほど差はなく、案外簡単に解決することも多い」
というようなことが書かれていて、なるほどと思った。
先生の生前、講演会に妻と拝聴しに行ったことがある。そのときも実際の心理療法の現場で起こった様々な事例をユーモアを交えて話して下さり、心が軽くなったのを思い出した。
「一生懸命努力を継続すれば、必ず報われる」というような自己啓発本に食傷気味の方にはオススメの本だと思う。